(以下に1~4回の読書会の模様を掲載)
 
ごあいさつ
          平塚ゆかりの作家 中勘助を知る会
                   会長 大蔵 律子

読書会は、平塚の文化財産である『しづかな流』をより深く知るため、年4回ほど行います。 平成30年度(2018)は2回行いました。
講演会や文学散歩などと合同で行うこともあります。
 
読書会では朗読を聴き、解説を行い、感想などを話し合い、分からないことは、みんなで調べる自主的学習会です。 そのなかに新しい発見があります。 読書会を重ねるごとに『しづかな流』の新しい世界が広がっていきます。 気楽にご参加ください。
  「千鳥の話と浜辺の生活」

       大蔵会長・挨拶

 
 ●日 時:  令和元年7月19日(金) 10時~11時30分
 ●会 場:  ひらつか市民活動センター C会議室
 ●挨 拶  会長 大蔵 律子      ●司 会  亀谷 中行
 ●朗 読  甲斐 千秋  吉柳 恵子  ●解説   飯尾 紀彦
 ●閉会挨拶 副会長 宮川 利男
 
☆席上、大蔵会長から以下の挨拶がありました。
☆「中さんの散歩道」を平塚の観光コースに選定頂ける様、準備を進めつつあります。
☆佐賀県にある『虹の松原』、ここにも「松露まんじゅう」が有りました。
 杵若さんの「松露まんじゅう」も観光地名産となる様に願いたいものですね。
☆美人画で知られる日本画家・鏑木清方の代表作「筑地明石町」が東京国立近代美術館にて公開される模様。(11/1~12/15)
 
※読書会は、内容が素晴らしく、中 勘助の世界へ引き込まれる思いが致します。 是非、お時間のある方は、ご参加ください。 読書会は重ねるごとに『しづかな流』の世界が広がって参ります。
 次回、第5回読書会は 「中さんの散歩道」を歩きます。 10月11日(金)午前中
 
1.中さんの散歩道
 中さんの散歩から、平塚海岸地域の多くの素晴らしい詩が誕生しました。
 朝夕の散歩は、1日のうち最も幸福な時と。
 
2.千鳥の話  詩 「千鳥の卵」「われら千鳥にてあらまし」
  
メダイチドリ 撮影/ 岡根武彦氏
  
3.浜辺の情景 海辺の描写  詩 「時化すぎて」「夜にして海辺にたてば」

 撮影/ 田中克彦氏

 「海辺の描写」について、お話をします。
①「辛みを帯びてきた太陽」辛みという味覚表現が見事に真夏の太陽を表現しています。
②「わたしはなみうちぎはの 呼吸が好きである」 穏やかな寄せては返す波を呼吸と捉えての表現ですね。
③一方、時化の後の波を「岸を どよもす 波の音」と言っています。 中さんならではの感覚表現が随所にあります。 文字で一幅の名画を描ける人です。
 
4.浜辺の生活
(1)地曳  詩 「朝網」「網引」
平塚海岸では400mおき位に地曳が盛んに行われ、多種多様な魚、蟹まで獲れました。
(2)昭和初期平塚海岸の生活
①中さんの1日: 朝食後散歩、仕事(読書・執筆)、昼食(紅茶・パン)午睡(稀)だが、仕事、散歩食前入浴(あると良い)、夕食(肉又は魚一品・野菜・麦飯)時には少量の酒 くつろぎ、仕事、睡眠(9時半、10時)
②買物: 爺さん婆さんが野菜など売りに来た、御用聞き、3坪の家庭菜園、地曳、駅北側商店街
③お手伝いのまんさん料理通、週一回パン焼く
④家事井戸、炭マキの時代だが、石油コンロあり、風呂の水汲み、掃除、洗濯全て手仕事
 
以下に読書会模様を、スナップ掲載致します。  

虹の松原にもある「松露まんじゅう」

飯尾さんによる詩の解説

熱心に聴き入る参加者

吉柳さん詩の朗読

吉柳さん・甲斐さん朗読と
飯尾さん解説

飯尾さん・吉柳さん 詩の詠み合せ

  「二つの詩の世界」 ”松籟と軽妙洒脱”

   オオルリ 撮影/ 岡根武彦氏

 
 ●日 時:  2019年4月5日(水) 10時~11時30分
 ●会 場:  ひらつか市民活動センター AB会議室
 ●挨 拶   会長 大蔵 律子   ●司 会   吉柳 恵子
 ●講 演      飯尾 紀彦   ●朗 読   甲斐 千秋
 ●閉会挨拶  副会長 宮川 利男
 
1.作家であり詩人 中勘助とは
 詩人の魂 ・「作者(中勘助)はおのれの眼で見、おのれの心で感じたこと以外に、いかなる人の眼も借りなかった」
        和辻哲郎『銀の匙』岩波文庫解説より
 孤高の人 ・「流行」の思想や物の見方には全然動かされなかった。 おのれの世界以外にはどこへも眼を向けようと
       しない。 いわんや文壇の動きなど風馬牛である。 和辻哲郎『銀の匙』岩波文庫解説より
      ・多い往復書簡は、小宮豊隆、岩波茂雄、志賀直哉、和辻哲郎など
 学識の人 ・古今東西の文明に深い造詣を持った人。 没後静岡市にトラック2台分の蔵書寄贈
 情の人  ・子供、タゴ、鳥、植物など、か弱いものに優しい眼差しなど
 放浪時代 ・20代後半~30代半ば 友人、知人、神社社務所、寺院庫裡などに寄宿
       40代、平塚で生涯一度だけ家を建てる。
 
2.二つの詩とは
 当時の平塚海岸地域は、須賀地域を除き黒松林一帯のなか、特産の桃畑や別荘、畑地などが点在しており、自然が豊かであった。 中さんは朝夕の散歩が大好きで多くの詩が生まれました。 その詩の中で、松濤の環境のなかで自然や動植物を詠った詩が多くあります。 一方孤高の人と言われた中さんでしたが、意外と軽妙洒脱な詩を多く詠んでいます。 今回、平塚海岸の豊かな自然を詠った詩を「松濤の詩」とし、愉快な楽しい詩を「軽妙洒脱の詩」として紹介しました。
 
3.「松濤の詩」から 鷺
  
  コサギ 撮影/ 劔持瑞穂氏
 ※当日は「鷺」でなく「はこべ」「わが宿の」「瑠璃鳥」「ほほじろの声」「海辺の野を行けば」「名もなき思ひ」
  を紹介しました。
 
4.「軽妙洒脱の詩」から 朝網
  
  提供 大磯町郷土資料館
 ※この他「尼さんかはいや」「高麗寺の市」「はうれん草」「恋はなあ」 を紹介しました。
  「タゴの話」

    タゴ

 
 ●日 時:  2月20日(水) 10時~11時30分
 ●会 場:  ひらつか市民活動センター A会議室
 ●司 会   吉柳 恵子   ●朗 読   甲斐 千秋
 ●紙芝居上演 大蔵 律子   ●解 説   飯尾 紀彦
☆タゴはクリスマス生まれ、5年2ヶ月の命でした!!
  タゴの誕生日は大正14年12月25日 昭和5年2月4日死亡と『しづかな流』で推定できます。
 
☆中さんはタゴの母親を知っていた
  中さんが海岸を散歩していたとき、孫と親子の犬を連れた婆さんにあった。 子犬が中さんにまつわりつき、街近くまで来ていなくなった。 後日ある家に飼われていることが分かり、その犬がタゴの母だ。
 
☆小さな友達が毎日のように、タゴの訓練に来てくれました。 中さんタゴを可愛がらない
  近くの別荘住まいの少年と中さんは友達になりました。 その訓練の時、「中さんちっとも可愛がらないだもん」「あなたがいないとき、可愛がっている」と、タゴを抱き上げ頬ずりをして見せた。
 
☆中さんの訓練はスパルタ訓練。 時にはパンチも
  タゴは厳しい訓練に応え、教えられたことをじきに覚えた。 中さんの訓練、たとえばこんな具合だ。 小屋に入らないので、首と尻を押し込み、隠れ、出てくると鼻パンチを見舞った。
 
☆どんなに疲れていても懸命な看病を続けた。
  中さんは病になったタゴに特製スープを作ったり、懸命な看病を続け、薄皮をはがすように回復した。 たいがいの人間よりは賢いタゴを愛している。 人間社会のようないらざる煩いがない。
平成27年平塚紙芝居の会 丸島隆雄氏に「中さんと
犬のタゴ」の紙芝居を制作依頼し上演を行いました。
この年、県手づくり紙芝居コンクールで特別賞を受賞
  「しづかに時は流れて~平塚の四季」
 
 ●日 時:  10月5日(金) 10時~11時30分
 ●会 場:  ひらつか市民活動センター A会議室
☆あいさつ  会長  大蔵 律子   司会 吉柳 恵子
『しづかな流』は、平塚の文化財産です。 かって、こんな美しい日本語で平塚を描いた人がいただろうか、勘助は詩人です。 平塚時代生涯で最も多くの詩を遺しています。 その瑞々しさは、今でも、心に染みます。
 
また、以下の挨拶がありました。
☆平塚の文化財産である『しづかな流』をより深く知るために読書会を行います。
☆10回開催し、年4回を予定しています。 但し、今年は2回で2回目は来年2月です。
☆読書会では朗読を行い、感想などを話し合い、その中で新しい発見があります。
☆分からないことは、みんなで調べます。
☆読書会を重ねるごとに『しづかな流』の新しい世界が広がって参ります。
 
1.朗読    甲斐 千秋
「しづかに時の過ぎてゆくのを…」 (冒頭の句)
「都留の山道」「高麗寺の市」「わが宿の」「ほほじろの声」等、朗読…
 
 
2.解説    飯尾 紀彦
・勘助の親友 和辻哲郎は「 中勘助はおのれの眼で見、おのれの心で感じたこと以外にいかなる人の眼も借りなかった。…」 と評価されています。 この言葉に中さんの詩人としての魂が込められています。
・リズム感がある、調子の良い、歯切れの良い軽妙洒脱な詩が幾つもあります。 「神田の生まれよ」と言っているようです。 「高麗寺の市」「はうれん草」「朝網」「尼さんかわいや」など
・難しいのは、昔の言葉づかい、旧仮名遣い、「やうに⇒ように」「あひだ⇒あいだ」古語、枕詞…
・「言葉」の音の響きを大事にしているところ、自然と音の良い言葉がこぼれてくるのでしょうか?
・朝夕の散歩がなにより大好き、散歩により多くの平塚海岸地域の自然を詠った詩が生まれました。
・『しづかな流』に登場した動植物 〔植物〕松露、撫子をはじめ128種 〔野菜〕法蓮草、蕪をはじめ83種 〔昆虫〕蜜蜂、赤蜻蛉をはじめ48種
〔魚貝〕鯛、蜆をはじめ68種 〔家畜等〕馬、犬をはじめ15種 〔鳥〕瑠璃、千鳥をはじめ65種 〔その他〕亀、昆布をはじめ41種 計448種
・東西の文明、自然、動植物に造詣が深く、特に鳥類にはことのほかこだわりを持っています。
・か弱いものに優しい眼差しで詠い、花や鳥を擬人化して恋人のように詠っています。
以下に読書会模様を、スナップ掲載致します。